高脂血症

高脂血症は、血中の脂質(脂肪)レベルが異常に高い状態を指します。この状態は、中性脂肪(トリグリセリド)や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の増加が主な原因です。高脂血症は心血管疾患や脳卒中などのリスクを増加させることから、適切な治療が必要です。

 

生活習慣病の療養計画とは

当院では糖尿病・高血圧症・高脂血症の管理は療養計画書を作成し、現状・問題点・目標・実現可能な行動・投薬治療・食事運動療法についてご理解いただいた上で治療を行います。治療計画を立てるうえで重要な採血は初診時若しくは2回目の受診の際に行い、定期的に確認します。血圧測定・歩数計測・体重測定は可能な限り毎日行うことをお勧めします。通院中は生活習慣病管理料1若しくは2が算定されます。。

 

糖尿病患者さんのためのコレステロール管理ガイド:血管を守る新しい基準

1.「血糖値だけ」の管理で安心していませんか?
「糖尿病の治療をしているから、ヘモグロビンA1c(HbA1c)さえ下がっていれば大丈夫」 もしあなたがそう思っているなら、それは非常に危険な「治療の落とし穴」です。
糖尿病治療の真の目的は、数値を下げることそのものではなく、「心筋梗塞」や「脳卒中」を徹底的に防ぎ、大切な命と健康を守り抜くことにあります。

肥満や糖尿病を放置すると、健康寿命が最大で19年も短縮するという研究報告があります。
糖尿病患者さんにとって、コレステロール管理の優先順位は極めて高く、血糖値と同じ、あるいはそれ以上に命に直結します。

2. 目指すべき数値:糖尿病患者さんのコレステロール目標値一覧
日本動脈硬化学会(JAS)のガイドラインでは、糖尿病があるだけで血管へのリスクが高いと判断されます。そのため、一般の方よりも一段と厳しい目標値が設定されています。
覚えやすい**「120 / 100 / 70 の法則」**を以下の表にまとめました。

LDL(悪玉)コレステロールの段階的目標値

一般的な糖尿病患者さん120mg/dL 未満
喫煙あり / 合併症※1あり:100mg/dL 未満
心筋梗塞などの既往歴あり70mg/dL 未満

 

※1 末梢動脈疾患、網膜症、腎症、神経障害などの合併症がある場合。
その他の重要な脂質指標

血管の健康はLDLだけでは決まりません。以下のバランスも意識しましょう。
HDL(善玉)コレステロール:40mg/dL 以上
血管の壁に溜まった余分な油を回収する「掃除屋」さんです。
トリグリセライド(中性脂肪):空腹時:150mg/dL 未満 / 随時:175mg/dL 未満 高すぎると、LDLをより小さく毒性の強い「小型LDL」へ変貌させてしまいます。

 

3. なぜ糖尿病だと目標が「厳格」になるのか?:血管へのダブルパンチ
健康な方の基準(140mg/dL未満)に比べ、糖尿病患者さんに120mg/dL以下が求められるのには、明確な医学的根拠があります。
「ボロボロの壁」に「泥」が入り込む
血管を一つの「部屋の壁」に例えて解説しましょう。
高血糖によるダメージ(壁の亀裂): 高い血糖値は、血管の壁を常にヤスリで削っているようなものです。これにより、血管の内側の壁(内皮細胞)は傷つき、亀裂が入ったボロボロの状態になります。
コレステロールの浸入(泥の蓄積): その壁の亀裂に、LDLコレステロールという「泥」が入り込みます。これが動脈硬化の正体です。
慢性炎症という「火災」: さらに最新の医学では、体内の余分な脂質が「慢性炎症」を引き起こすことが分かっています。血管の壁で**「火事(炎症)」が起き、そこに「泥(コレステロール)」**が溜まることで、プラークという塊ができ、血管を塞いでしまうのです。
この炎症は全身、さらには脳にも影響を与え、集中力の低下や認知症のリスクまで高めてしまいます。糖尿病患者さんの心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが非糖尿病者の数倍に跳ね上がるのは、この「傷ついた壁」と「炎症の火」が原因なのです。

 

Q. 血糖値が正常になれば、コレステロールの薬はやめてもいいですか?
A. 血管保護のために、継続することをお勧めします。
血糖値が下がっても、長年の高血糖でついた血管の「傷」がすぐに消えるわけではありません。スタチンなどの薬は数値を下げるだけでなく、血管壁のプラークを安定させ、「火事(炎症)」を鎮める役割があります。また最近では、**SGLT2阻害薬(フォシーガなど)やGLP-1受容体作動薬(マンジャロなど)**といった、血糖を下げながら心臓や腎臓を強力に保護する新しい標準薬も登場しています。これらを組み合わせることで、未来の健康を確実に守ることができるのです。

 

Q. 卵は一日一個までと決めたほうが良いのでしょうか?
A. 個数よりも「食べるタイミング」と「脂質の質」に注目しましょう。
最新の食事療法では、卵の個数そのものよりも、肉の脂身などの「飽和脂肪酸」を控えることが重視されます。また、**「炭水化物は日中のエネルギー、夜は貯蔵用」**という原則を覚えてください。朝や昼にしっかりエネルギーとして摂り、寝るだけの夜には炭水化物を控えることで、中性脂肪の蓄積を防ぐことができます。

 

Q. コレステロールのお薬に副作用はありますか?
A. 安全性は高いですが、医師によるモニタリングが不可欠です。
まれに筋肉痛のような症状(横紋筋融解症)が出ることがありますが、定期的な血液検査でチェックすれば過度に恐れる必要はありません。糖尿病治療は**「うさぎとカメ」のカメのように**、焦らず一歩ずつ、確実に継続することがリバウンドを防ぐ秘訣です。私たちは、副作用の初期症状を見逃さないよう、常にあなたの隣で伴走します。

 

Q. LDLは低ければ低いほど良いのですか?
A. リスクが高い方ほど「Lower is Better(低いほど良い)」が定説です。
血管の壁の「火事」が激しい(リスクが高い)人ほど、材料となる「泥」は極限まで少ない方が安全です。体に必要なコレステロールは肝臓で自給自足できるため、治療の範囲内で低くなりすぎて健康を損なうことはまずありません。

 

高脂血症の原因は?

原因は多岐にわたりますが、主な要因には以下の点が挙げられます。

遺伝的要因: 家族歴がある場合、高脂血症のリスクが高まります。
不健康な食事習慣: 高脂肪、高糖分、高カロリーの食事は、脂質異常を引き起こす原因となります。
身体活動不足: 運動不足は、脂質異常を促進します。
体重増加: 過体重や肥満は高脂血症のリスク因子です。
喫煙と飲酒: 喫煙と過剰なアルコール摂取は、高脂血症のリスクを増加させます。

心血管疾患のリスクを低減するため、定期的なフォローアップと健康的な生活習慣の維持が、治療の成功には不可欠です。高脂血症に関する包括的なケアを提供し、患者様の健康を最優先に考えています。お気軽にご相談ください。

高脂血症の治療は?


高中性脂肪(TG)の治療:
健康的な食事: 脂肪分や糖分を制限し、飽和脂肪酸を減らすことが大切です。
適度な運動: 週に150分以上の有酸素運動を心がけましょう。
体重管理: 適切な体重を維持することが中性脂肪の制御に役立ちます。
薬物療法: 薬物治療が必要な場合、フィブラート系薬(中性脂肪の合成と分解を調節する働きを持つ薬剤)、オメガ-3脂肪酸(DHAとEPAなど)などが処方されることがあります。

悪玉コレステロール(LDL)の治療:
ダイエット: 飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を避け、食物繊維や健康的な脂肪を摂取することが大切です。
運動: 有酸素運動や筋力トレーニングは悪玉コレステロールを低減させます。
薬物療法: 薬物治療が必要な場合、スタチン薬やエゼチミブ・ガンマオリザノールなどが処方されることがあります。